今回は、風俗営業法2条1号の社交飲食店(スナック、キャバクラ等)の店舗構造基準について、その根拠を踏まえて解説していきます。
本記事の対象
①これから風俗営業を営もうとする事業者様
②現時点で風俗営業を営んでいる事業者様
を対象として執筆しております。
スナック・キャバクラ等の営業所構造基準について
風俗営業法2条1号(社交飲食店)の店舗構造基準
はじめに、風営法2条1号の基準について下記に列挙します。
①客室の床面積は、和室の客室に係るものについては1室の床面積を9.5㎡以上とし、その他のものについては1室の床面積を16.5㎡以上とすること。ただし、客室の数が1室のみである場合は、この限りでない。
②客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること。
③客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。
④善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
⑤客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りではない。
⑥営業所内の照度が5ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
⑦騒音又は振動の数値が法第15条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
スナックやキャバクラなどの接待を伴う飲食店は上記の基準をすべて満たさなければいけません。
次に上記各基準の根拠を踏まえ細かく解説していきます。
営業所構造基準の根拠を踏まえた解説
客室の面積について
客室の範囲
客室とは、通常客が飲食をし、または遊興のために利用する場所をいい、これには客席のほか踊り場を含みます。
料理店における廊下、床の間、押入れの部分、カフェ等におけるカウンター内側部分(カウンターそのものの部分は客室に含まれます)、キャバクラ等におけるバンド席その他客に飲食物を提供するための配膳等の準備をする場所等は、通常、客室には含まれません。
キャバクラ等における客室の間の通路等は客室に含まれます。
客室の面積基準
客室の面積の基準は、客室1室ごとの面積を定めたものであるから、2以上の客室を有する場合には、それぞれの客室の面積がこの基準に達している必要があります。
また、別個の客室であるというためには、それぞれの客室が、側壁、ドア、障子、ふすまその他のある程度固定された遮蔽物によって分断され、お互いに独立した別個の部屋として利用しうるような状態であることが必要です。
部屋の間に格別の仕切り等もなく、お互いにその部分を見通せるような構造のものは、ここにいう別個の客室とはいえないため、それぞれの面積が基準に達していなくても、それらを合算した面積が基準に達していればよいとされています。
客室が1室の場合
客室が1室の場合は、床面積の基準はありません。
なぜなら、外部から客が入ってくればすぐその客室であるという構造であれば、善良の風俗を害する行為が行われる危険性が少ないと考えられたためです。
営業所外部からの見通しについて
客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであることが要件とされるのは、営業所内部の歓楽的雰囲気が外部から見えると、周囲の風俗環境に影響を与えるためです。
ですので、客室及び客席の双方ともが営業所の外部から見通せないように設備を設けなければいけません。
上記の例として、客室の窓に目隠しを設け、出入口のすぐ内側につい立てを置く等の見通しを妨げる設備を設けることが必要になります。
客室内部の見通しの妨げについて
見通しを妨げる設備とは、仕切り、ついたて、カーテン、背の高い椅子(高さが概ね1m以上のもの)等をいいます。
見通しを確保する必要があるのは客室の内部です。
このため、例えば、客室の中央に調理場が設置されているような場合に客室と調理場の間に見通しを妨げる設備を置くことは認められないですが、壁際に調理場があるような場合に、客室内の見通しを妨げない方法で、客室と調理場の間に見通しを妨げる設備を置くことは可能です。
見通しを妨げる設備を設けてはいけない根拠
見通しを妨げる設備を設けないことが基準とされる趣旨は、営業所内において善良の風俗を害するような行き過ぎた行為が行われることを防止しようとすることにあります。
余談ですが、「見通しを妨げる」とは、「見通すことが困難」という程度に至らなくても該当します。
写真、広告物等について
「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備」とは、例えば、法に違反する行為を行っていることをうかがわせる広告、著しく、射幸心をそそるおそれのある広告、男女の性行場面を写した写真、売春を行っている場所についての広告、性器を模した装飾、回転ベッド、振動ベッド等の設備をいいます。
施錠設備について
施錠の設備が問題となるのは、密室になると過剰な接待等が行われるおそれがあるほか、管理者や従業員等による業務管理が困難になるといった問題があるからです。
営業所が売春、わいせつ行為、賭博等のばしょとして利用されることを防止する意味もあります。
施錠の設備がある時点で、実際には施錠していなくても違反となります。
営業所外に直接通ずる出入口については防犯面等の必要性があるため、例外的に施錠の設備を設けることが認められています。
照度(明るさ)について
「営業所内の照度が5ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有する」とは、一般的には、照度の基準に達する照明設備を設けていることで足りるとされています。
また、照度の基準に満たない照度に自由に変えられるスライダックス(調光器)等の照明設備を設けることは認められていません。
そのほか、照明設備のほかに営業時間中に常態として光を発することが想定される設備が設けられている場合は、当該設備と照明設備の双方の光によって、常態として照度の基準に達するのであれば、必要な構造又は設備を有することになります。
騒音について
「騒音又は振動の数値が法第15条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有する」とは、営業活動に伴う騒音が条例で定める数値に達する場合は、防音設備を設けなければならないとするものです。
しかし、例えば、音響設備を設けないため特に騒音が発生しない場合や、建物の壁が厚いこと、営業所の境界地まで相当な距離があること等により外部に音が漏れない場合にまで防音設備の設置を義務付けるものではありません。
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